あやまち
翌日、翔太が帰ったあと、いつものようにアルコールを持って麻希がやって来た。



ビール缶のプルタブを開け、麻希がその側面同士をコツンと合わせてきて、“乾杯”と呟いたあと、それを口にした。




「何に乾杯なの?」


「ん?……なんとなく」




そう言って微笑む麻希は、数日前に会ったときよりスッキリした顔をしている。



少し酔いが回り始めた頃、麻希がポツリポツリと、話し始めた。




「渉とあたしってさ……、付き合ってはいるけど、実は、あたしの……片想いなんだ」


「……」




少し前のあたしなら、そこは鋭く突っ込むところ。


でも……




『おまえが……好きだ』




あの時、やさしい瞳で訴えてきた言葉……


あれから、耳に付いて、離れないんだ。
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