あやまち
後ろから抱き締められているせいで、振り払おうとしてもうまくいかない。




「……翔太っ!」




無意識にそう放たれたその声を聞いてか、渉は、ふっ、と笑いを漏らす。




「叫んでも、届かねーよ」


「なっ、んでっ!」


「翔太と麻希で買い出しに行ったから」


「……」




何で?



渉の車なのに……



何で、わざわざ翔太が麻希と買い出しに行くの?



そんなあたしの疑問に応えるように、渉が口を開く。




「俺、飲んじゃったんだよね」


「……」




飲んだって、アルコールのこと?




「まさか、こんなことになるとは思ってなかったけどな」




“俺にとってはラッキーだったよ”と付け加える。



後ろにいるから顔は見えないけれど、口調からして笑っているように感じる。
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