あやまち
「泣いてんの?」




この静かな空間で、突然なんの前触れもなく後ろから聞こえてきた声に、身体がビクンッと反応した。




「そんなに怯えるなよ」




振り返った先にいた渉は、少し後ずさりしたあたしに苦笑しながら、あたしとは少し距離をおいて、柵に手をかけた。




「翔太と、喧嘩した?」


「……」


「もしかして、あの時のこと、バレたりした?」


「……」


「……もう、……俺とは、話したくない?」


「……」




そう聞かれたけれど、正直な気持ちを言えば、話したくなかった。



だって、翔太とこうなってしまったのは、すべて渉のせいだと思うから。



渉だって、きっとそれには気付いているはず。



でも、聞いてみたいことがあった。




「渉は、翔太に自分の気持ちを話したことがあるの?」




『渉に、……コクられた?』




そう聞かれたとき、まるで渉があたしにコクるのを知っていたかのような口ぶりだった。
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