《短編》空を泳ぐ魚
―ピーンポーン…

普段は鳴るはずのない家のチャイムが、人の来訪を告げてくれた。


こんな時間に誰だろう、と。


仕方なく玄関のドアを開ける。



―ガチャッ…

「―――ッ!」


瞬間、目を見開いた。


弁当の袋を片手に、清水が立っていたのだ。



「…おじゃまー…」


俺が邪魔なのか、“お邪魔します”の意味なのか。


玄関で立ち尽くす俺をスルリと交わし、勝手知ったるように俺の家に上がった。


予期せぬ出来事に、まだ上手く頭が働かないけど。


これはこれで、かなり嬉しかったり。



「…来るなら先に連絡しとけよ。
エロ本隠せねぇじゃん。」


その背中から抱きしめ、耳にキスを落として後ろから服に手を忍ばせた。


形の良い胸を、下着の上から撫でる。



「…小テストあるんでしょ?
それの答え、聞きに来たの。」


一切動じることなく清水は、振り返ってため息を混じらせた。


ストレートすぎる理由だけど、必要とされれば地味に嬉しい。



「…んじゃあ、ヤることヤったら教えてやるよ。」


教えちゃう俺って、本当に教師失格だなぁ、って思う。


だけど人は、欲望を目の前にすると無力なのだ。


自分にそんな理由付けをし、俺を見上げる清水の唇に自らの唇を押し当てた。


だって俺、我慢とか出来ねぇし。


もぉ最高に、ハマっちゃってるんだけど。


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