その瞳で見つめて~恋心~【完】
「何か、キスしたくなってきた」

「ええっ!?」

「──ダメ?」

進藤君はあたしの顔色を窺(うかが)うようにして、真っ直ぐに射抜いて首を傾げる。


「だ、ダメっていうか……」

あの、その顔は反則です。

相変わらず、彼の上目遣いには苦手意識が残っている様子だ。


「顔を真っ赤にされると、余計にしたくなるんだけど」

「っ、進藤君っ……」

進藤君の顔がぐんぐんと距離を縮めて、接近してくる。


だ、だって、進藤君とのキスはドキドキしすぎちゃって……!


その端整な顔立ちの彼に迫られれば、誰だって緊張するに決まっている。


「水嶋さん?」

どんなときにでも抵抗するあたしがいつになく拒否反応を示さないことに気づいたらしく、進藤君は目を開く。


「って、うわっ!? ──しかも、熱っ」

あたしの顔面を見るなり驚いたかと思えば、進藤君の手がこちらのおでこに置く。


「ちょっ……、保健室行こう!」

どうやら熱があったみたいで、その熱にうなされていたせいか、この先のことは覚えていない。

けれども、彼の言葉の後に体がふわっと宙を浮くような感覚だけはわかっていた。
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