その瞳で見つめて~恋心~【完】
「──今日はいいよ」

「そう? じゃあ、送るよ」

「あ、今日は1人で大丈夫。ありがとう」

「え、水嶋さん?」

「お邪魔しました」

あたしは逃げるように進藤君の家を後にした。

──というより、彼の家から飛び出したんだ。


だって、泣きたかった。
好きな人は進藤先輩じゃない。
進藤君なのに。


進藤君の優しさがあたしの胸を締めつけて、苦しくて泣いてしまいそうだ。

おまけに彼はまだ、あたしがお兄さんのことを好きだと思い込んでいる。

そう思うと余計につらいし、進藤君に悪い気がして、泣いている顔を見せないようにするために逃走をはかったんだ。


しばらく走り抜けると、偶然に見えた公園の近くにある電柱。

その柱に手をつけて、うつむいてハァ、ハァ──と息を切らす。

そして地面を見つめたその途端、涙があふれてきてしまった。


伝わらない。
──伝えられない。
 こんなに、恋ってつらかったっけ?
 わからないよ……。


「──そこの女の子」

「え?」

背後から男性の声が聞こえたから、顔を上げて涙を拭き取ってから振り返る。

すると、そこには学ランを来た男子が3人いた。
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