光~彼との夏物語~
男の真摯な瞳があたしを捉える。

信じない。信じたくない。信じちゃいけない。

そう思っても。
もしかしたら、そんな思いが込み上げて。

「俺と一緒にこいよ。」
男はそう言うとそれ以上何も言わずただあたしを見つめた。
まっすぐな目だった。
ただ純粋に男の瞳を綺麗だと思った。

まともにあたしに向き合ってきた大人はこの男くらいだな、なんてそんなことを考えながらあたしは濡れた頬を手で拭いた。

「あんたと一緒に行けば何か分かるわけ?」

精一杯の答え。
期待なんかしてない。
いや、そう思われたくないだけ。

でもその言葉だけで男は分かってくれるような気がした。


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