ママのバレンタイン
「ねえ、ママ、バレンタインにはどんなチョコがいいと思う?」

「そうねえ、香奈の彼氏は体育系?文化系?それとも、お洒落?無頓着?」

「う~ん、体育系でどっちかっていうと、無頓着のわりには、口うるさいかな……」

「くすくす……ウチのヤツと一緒ね」

「やだあ!ヤスオちゃんなんかと一緒にしないでよ!まだまだ認めてないんだからね」

 私がそう言うと、ママはちょっと悲しそうに笑ってから、私と腕を組んでぴったりよりそってきた。
 
 私、新庄香奈は高校二年生。初めて男の子にバレンタインのチョコをプレゼントしようと思い立ち、ママにつき合ってもらう。

 なぜ、友達ではなく、ママかというと、ママが大好きだからだ。
もっともこれは私の心の声だけど。

 私の洋服の見立ても、ママに任せると、間違いがないし勉強になる。チープシックを基本にして、ブランドをお洒落に取り入れる。ママは私の憧れの人。

「パパは、元気?」
「相変わらず忙しそうだよ」
「ふ~ん、恋人できたかな?」
「知らないよお……娘に聞くなよ、そんなことさあ……」
「へへへっ」
 
 ママはお気楽にへらへら笑ってみせた。
 まったく、私の親たちはどんなことがあったか知らないが、私が六歳の時に離婚した。

 ママは私を連れて行くかどうか迷ったらしいけれど、とにかく経済的に不安を感じたママは、パパとパパの母親、つまり私のおばあちゃんにお任せして、とっとと、新庄家の嫁・妻・母をぽーんと放棄した。ママに言わせれば、「なるべくして成った結果」らしいが、いまだにおばあちゃんとは仲がいい。世に言う「嫁姑戦争」とは無縁だったのかなあ?とも思う。私もあれから十年、いろいろあった。親の離婚でその余波を多少なりとも子どもだって被るのだ。

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