【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「どうかした?」
席に着くと、メニューを手にサトシが微笑む。
「ううん」
私も微笑みを返す。
本心を隠して微笑むのも――サトシのせいで上手くなってしまったことだった。
「どうして俺がこの店を知っているかっていうとさぁ……」
突然サトシがそんなことを言い出したので、心の中を見透かされたようでドキリとしてしまう。
「谷本先生が教えてくれたんだ、この店」
「え?」
結衣子さんとこの店を訪れた谷本先生が、とても雰囲気が良い店だから友里ちゃんと行くといい、とサトシに教えたのだそうだ。
「そうなんだ……」
「ところで、友里のその服、かわいいな」
「どうしたの、いきなり」
「いや、谷本先生が、友里のことを面と向かって褒めてやれって言うから」
「……ぷっ」
思わず吹きだしてしまった。
「なんだよ」
「ごめん、なんでもない。ありがとう、嬉しい」
谷本先生に言われたことを間髪入れずに実行に移すサトシって……
なんて素直なのだろう。