【完】 After Love~恋のおとしまえ~
それは、布に包まれた四〇センチくらいの長さのものだった。
それをダンボールから取り出して布を開いた私は、目が点になってしまった。
中から出てきたのが人形だったからだ。
ぬいぐるみのような類のものではなく、まさしく人形――ピンク色の服を来た、おままごとで使うような女の子の人形――だった。
えぇ?
どういう趣味よ?
私の「男性の趣味に対する許容範囲」は、それほど広くないかもしれない。
美少女フィギュア集めが趣味の人は倦厭してしまうし、電車マニアの人の話はちょっぴり苦手。
人形が趣味の男性は……気持ち悪いと思ってしまう……
でも。
「これは、見なかったことにしてあげよう」
人には誰しも、触れられたくないことの一つや二つはあるだろう。
私はその人形を布で包みなおすと、そっとダンボールの中に戻した。
「どう? 進んでる?」
サトシが部屋に入ってきたのがその直後のことだったので、私の肩がびくっと震える。
それから、人形を手に眉をひそめている姿を見られなくて良かったと胸をなで下ろした。
なのに、次の瞬間。
サトシはダンボールをのぞき込むと、その包みに手をかけたのだ。