【完】 After Love~恋のおとしまえ~
私は、かつて結衣子さんから聞いた「谷本先生の看護師さんとの浮気」の話をぼんやりと思い出していた。
結衣子さんからあの話を聞いたときに、私が懸念したこと……
まさにあれが、当たっていたということか。
私は、無意識のうちにぽつりと呟いていた。
「私が、サトシの仕事について何も分からないのがいけなかったの?」
「それは違うよ!」
サトシが首を振る。
「友里は何も悪くない。俺が……ただ俺が、弱かったんだよ」
「サトシは私に何も話してくれなかったけど……私にも、そういうこと話して欲しかった」
聞いたところで、何もできなかったかもしれないけど……
だけど、それでも、話して欲しかったよ。
「そうだよな、ごめん」
本当にごめん、とサトシが頭を下げる。
「だけど、離れてみて分かったんだ。本当に好きなのが、誰なのか。ももちゃんに心が揺れたのは確かだけど……一生そばにいたいと思うのは、やっぱり友里だった」
許して欲しい、とサトシが私の手を握る。
「ごめんね、サトシ……」