【完】 After Love~恋のおとしまえ~

あまりにも予想外の発言に、私の思考回路が停止してしまった。

なんとか回路を修復しようと試みるも、もはや次に続ける言葉が思いつかない。

そんな私に向かい、母親は諭すように口を開いた。

「いいですか。あなたは、うちの娘が彼に会いに行くときどんなに嬉しそうな顔で出かけるかを知らないからそんなことを言えるんですよ。娘の様子を見ていれば、どんなに彼のことを好きなのかが分かります。そこに『不倫』などという薄汚い言葉が入る余地はありません」

唖然として立ちすくむ私に、母親はさらに畳みかける。

「好きになった相手が、たまたま既婚者だった。それは仕方のないことです。それでも、娘が楽しそうにその人と出かけるのであれば、誰にもそれを邪魔する権利はないのです!」

いや、邪魔する権利はありますって! 私、妻ですから!

例のごとく、その叫びは心の中に留まってしまった。


なぜなら

――この母親、頭おかしい。

驚きを通り越して、むしろ恐怖の域に達してしまったからだった。
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