【完】 After Love~恋のおとしまえ~
あまりにも噛みあわない会話にめまいがしそうだったけれど、ここでくじけてはいけないと、門扉にかけた手に力を込めて気を取り直す。
「ではお母様は、お嬢さんが不倫をしても問題ないとお考えなのですか」
あえて「不倫」という言葉を使ってみた。
すると、今度は思いがけず
「いえ、不倫は問題です。いけません」
母親はひょうひょうとした顔で、さっきまでの発言と矛盾したことを口にした。
「にもかかわらず、お嬢さんの行為については問題ないと受け止めていらっしゃるのですか?」
その矛盾を指摘してみたところ、母親は、もっと思いがけないことを口にしたのだった。
「娘のことについては、不倫とは考えていません」
不倫とは考えていない、ですと?
「既婚者と抱きあってキスをしても、不倫ではないのですか?」
「うちの娘の場合は、不倫ではありません」
「不倫ではなくて、ではいったい何だとおっしゃるんですか!」
つい語気が荒くなってしまった私の胸元に、母親はノートを押しつけてきた。
「だから、このノートを読めば分かるでしょう! 娘の恋は、純愛です!」
「……は?」