【完】 After Love~恋のおとしまえ~
旅行当日、サトシはかなり遅れて待ち合わせ場所にやって来た。
「遅いよ! 急がないと、ギリギリよ?」
「ごめん、ごめん。あぁ、そういえば俺、コンタクトの洗浄液がなくなったから、買わないといけないんだ。それからATMに行って、お金を下ろさないと」
どうしてそういう事は、前日に済ませておかないかなぁ……
呆れつつも、「いや、昨日は急患でも来て、忙しくて時間がなかったのかもしれない」と思い直す。
「じゃあ、急いで薬局に行こう!」
サトシを促し、近くの店に駆け込んだ。
「時間ないから早く買ってね!」
焦る私を尻目に、サトシはのんびりとこう言った。
「俺がいつも使ってるヤツがないや」
「え? いつものじゃなくてもいいじゃない。時間ないんだから、どれでも適当に買えば?」
「いつものじゃないと嫌なんだよな。まぁ、いいや。向こうに行ってから買うから」
「向こうに行ってから? それって、西表島で買うつもりってこと?」
「そう」
「向こうには、それこそないんじゃないの? とにかく、どれか買っておいた方がいいと思うけど」
「いや、西表島にだってあるだろ。どの店にも絶対にあると思う。有名なメーカーのだし」
どの店にも絶対にある?
どうしてそう言い切れるのかな。
今現在、この店にはないというのに!