寂しがりやの猫
「奈都さん…」

不意に抱き締められて 息が止まりそうになる。

トクン…トクン…と心臓がなった。

「失礼ですよ。人の顔を見て笑うなんて」

「ごめん…」

私は 田村の肩にアゴを乗せて泣いた。

田村は優しく髪を撫でてくれた。

「ちゃんと 待っててくれたんですね」

「ん…」

涙で声にならなくて、コクコクと頷く。


「ありがとう」

田村は 私から離れて顔を見た。


「ランチ 行きましょう。お腹空いてるんです」

そう言って指で私の涙を拭ってくれた。

< 210 / 214 >

この作品をシェア

pagetop