【短】半透明な愛を捧ぐ
とりあえず、当たり障りないように聞いてみた。
しかし彼は見事に目を閉じていて、聞いていないようだった。
『お前、変な言葉……ちょっと髪を纏めてみろ』
まさか話を無視されるとは思わず、「えっ?」と聞き返した。
『だから、ちょいと髪を纏めてみろって』
「……はい、」
訳が分からないまま、緩く一つに手で纏めてみた。
彼の顔を見ると、なんだか切ないような嬉しいような顔をしていた。
『…たから、来れたのか』
1人で満足するように、頷いたけどあたしにはさっぱり分からない。
『お前は今、生と死の狭間にいる』
「は…?」
ちょっと待って、話が見えない。
少し間が空いた後「だから早く戻れ」と怒るような口調で言った。
「ちょっと意味が分からないんですけど…」
『そのままだ』
「…別に、死んでもいい」
お婆ちゃんに、会いたい。
そう投げやりに言うと、軽く頭を叩かれただけなのに、その重みが伝わった。