【短】半透明な愛を捧ぐ
『ぶざけるな!俺は…っ、俺は、あの日からずっと忘れたことなんてなかった!…勝手に死ぬなんて許しはしない』
泣きそうに掠れた声で細々と話す姿を見て、何かがこみ上げてくる。
無意識に、彼の冷たい手を握った。彼はあたしの手をさらに強く握り返してくれた。
「……軽い、冗談です」
『そんな冗談、心臓に悪いから言うな』
今もなお、彼はあたしの左手を離そうとはしなかった。
──『梨吉さん、お慕いしております』
その途端、まるでさっきの続きみたいにスッと頭に入ってきた。
……あたしは、りつさんの生まれ変わり…なの?
そう考えると全ての辻褄が合う。
『…アナタが忘れても私は、忘れません』
『りつ…、』
驚いたようにゆっくり顔を上げる梨吉さん。
その目には一粒の涙が流れていた。
──まるで、半透明。
「…もう、行きますね」
『…そうか』
名残惜しそうに離れた彼の手は、まだあたしの手に感覚を残している。
『絶対に会いに行く。待ってろ、りいな』
「っ、今あたしの名前…」
そのまま、あたしの目の前が真っ暗になっていった。