不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
*
「遅い。」
「はぁー、はあ、…こ、これでも急いだんだから。」
ばっと男子の制服を尾花さんに突き付ける。ちなみに予鈴は5分前に鳴った。完璧遅刻である。
「ここから保健室までそんなに距離ないでしょ?」
「走ってたら先生に捕まって説教されたの!そ、それに男子の制服借りるのすごく恥ずかしかったんだから!」
「ふぅん。ごくろうさま。」
まったく感情がこもってない。私は怒りが込み上げてきたが、堪える。なんだか入学してから本当にいいことがない。本当にストレスで死んでしまいそうだ。
「不満そうな顔してるねー。」
「不満ですから。」
「欲求のほう?」
「ば、ばばばかじゃないの。」
「あはは、どもりすぎ。」
尾花さんは意地の悪い顔ではなく、本当に可笑しそうに笑った。それが珍しくてまじまじと彼の顔を見れば、「何?」と聞いてくる。
「…なんでもない。」
「そ?」
尾花さんは私の目を気にすることなく堂々と着替えた。ますます理来そっくりになりびっくりする。
「…本当に、理来と他人?」
「うるさいなぁ他人だよ。」
それでも信じられなくて、もう一度聞こうとしたら呆れ顔でため息をつかれた。