不運平凡少女が目立つ幼なじみに恋をした。
「ていうか理事長だからってそんなに簡単に女装の許可だしていいの!?」
「似合うからいいよって言われた。」
「…もうつっこまない事にする。」
深く考えちゃ負けな気がした。それからくだらない事を話して時間を潰した。(購買のクリームパンが美味しいとか、昨日のドラマのヒロインは絶対あの男とくっつくとか)
高校に入学してから誰かとこんなに話したのは初めてで、楽しい。
「私、尾花さんのこと苦手じゃないかも。」
「…突然何?」
「もっと、意地悪な人だと思ってた!」
「ホント、心ちゃんって失礼だよね。」
「尾花さんに言われたくないんだけど。」
ふふ、と笑うとそれにつられて尾花さんも笑った。
「心ちゃん、携帯貸して。」
「え?うん。」
尾花さんに携帯を渡すと、何やら操作している。しかし、すぐに携帯を突き返された。
「何したの?」
「俺のアドレス登録しといた。」
アドレス帳を見れば確かに登録されていた。素直に嬉しい。「にやにやしすぎ。」尾花さんに指摘されて、慌てて表情を戻せば彼は可笑しそうに笑った。
前に理来にも言われた気がする。私はそんなにわかりやすいのだろうか?
「そろそろ戻ろっか。」
「うん。」
時計に視線をうつせばそろそろ1時間目が終わるころだった。椅子から立ち上がり教室をでる。
「心ちゃん、」
「ん?」
「佐倉君を嫉妬させるってこと、忘れてないよね?」
「あ。」
すっかり忘れてた。私は理来そっくりな尾花さんをみて表情を引き攣らせる。