Mary's Boy Child ―お父さんとお母さんはねこになった―
老人が歩みを再開する。
場面は移り変わり、気付けばまた夜が更けていた。
その夜の下でおれ達は窓から見つめる。
病院という建物の外から、生まれたばかりの我が子を抱くおれ達を。
仙太郎が生まれたことに、満面の笑顔を零しているおれ達がそこにはいた。
老人が歩みを再開する。
一歩また一歩、老人が歩むと変わる場面。
そこに映し出された場面は、おれと頼子と仙太郎。だけれど、何故かおれと頼子ばかり。
同僚と活き活き仕事をしているおれや、接待している客と笑っている頼子、仕事をしているおれ、仕事をしている頼子、そして家で口論しているおれと頼子。
仙太郎の姿がまったく見受けられない。
流れるように過ぎていく場面から聞こえてくるノイズは、おれと頼子の喧嘩。
お互いに家のことで喧嘩していたり、不満をぶつけていたり、些細な事で腹を立てていたり。
特に家のことでは喧嘩ばかりしているよう。
聞いているだけでも分かる、おとなげない醜い喧嘩だ。