樹海の瞳【短編ホラー】
 二人は、階段を上っていった。西郷が前で、嫌がる木暮が珈琲を持って、後から付いて来ている。
 階段を上がると、二階にはまたしてもアンティーク調の古いドアが、ポツンと一つあるだけだった。

 西郷がドアをノックしようとした時、ドアの向こうからボソボソと話す声が聞こえてきた。

 黛の声と、若い女の声だ。

 西郷と木暮は驚いて顔を見合わせた。西郷は木暮に、仕草で静かにしているように促すと、ドアノブの下に付いてる鍵穴を覗き込んだ。

 すぐに部屋の中が見えた。窓際のベッドに、ニットの赤いワンピースの女が腰かけているようだ。
 首から下までで、顔は見えない。時たま、黛が鍵穴の視界を遮った。

 西郷は木暮に順番を譲った。木暮は遠慮したが、結局、覗かされた。
 暫くして、西郷は木暮をドアから引き離した。

「西郷だ。入りまっせ」

 言葉が言い終わらないうちに、ノブに手を掛けた。

 ガチャ。

 ゆるんだノブが軽い音を立てた。

 ドアは難無く向こう側に開いた。
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