春、恋。夢桜。

【三】

戸崎は、無理矢理に俺を起き上がらせた。

ベッドに座らされた俺は、仕方がなく戸崎を見る。


「よし!俺の初恋はな、小学校1年生の時だったんだ。
その頃から、俺は頭も割と良かったし、足もそれなりに早かった!」


腕を組みながら得意げに頷く戸崎を、俺は迷わず睨み付ける。


「ただでさえわけのわかんねぇ話を聞いてるんだ。無駄な部分は良いから、早く本題に入ってくれよ」

「あぁー、わかった!わかった!
それでな、そんな美少年の俺は、ある日胸をきゅうっと掴まれるような感覚に陥ったんだ」



本題に入れって言っただろーが……。


どうしてもドラマチックに説明したいのか、戸崎の話は回り道ばっかだ。


俺は小さく溜息をついてから、また話に耳を傾けた。


「相手の女の子はさ、そりゃあ可愛かったよ。目がくりくりしててさ。髪は綺麗な栗色のショートボブで、少しウェーブがかかってたな……」


当時のことを思い出すみたいに、戸崎は少し上を見上げながら言った。



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