春、恋。夢桜。
「俺は思い出じゃ生きていけねぇよ」

「は?」


「物より思い出……とかいう、あのふざけた台詞あるだろ?俺は、あんなの嘘だって思ってる。

思い出だけで幸せになれたら、誰も苦労しねぇよ」



満足や幸せは、実際に動いて、触って、見て、初めて得られるモノだと思う。


だから、戸崎の言うことが綺麗事にしか聞こえなくて、だんだんと腹が立ってきた。


「別にそんなこと言ってねぇだろうが」

「え?」

「俺だって、そんな台詞好きじゃねぇよ。俺は欲深いからな。
物も思い出も、両方持ってなきゃ満足できねぇよ」


戸崎は、おもむろに立ち上がった。


「麗華ちゃんは、ちゃんと残してくれてるじゃねぇか」

「は?」
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