春、恋。夢桜。
六、紅姫

【一】

 
「…………んっ……?」


ふわふわとした不思議な感覚に包まれて、そっと目を開けた。


覚えてるのは、どんっ、という衝撃を受けたところまで。

今の状況がどんなものなのか、理解する術が見つからない。


「やっと、目を覚ましたのですね」


いきなり耳に飛び込んできた優しい音色に、思わず辺りを見回した。


「どこを見ているのです?あたくしはここにいますよ」


そう言われて、やっと声の持ち主の場所がわかった。

頭の上にふわりと浮かぶ彼女が、目の前にすとん、と舞い降りる。


「お久しぶりです。そして、お疲れ様でした。
あたくしは、あなたにお会いできるのを楽しみにしていたのですよ」


彼女はゆっくりと……とても美しく微笑んだ。


「お帰りなさい。カズ……いえ、麗華」
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