春、恋。夢桜。
もちろん、俺が教えるだけじゃない。

カズハに教えてもらったこともたくさんあった。


全ての花の精をまとめる、紅姫[べにひめ]という妖精がいること。


その紅姫が、カズハという名を付けたこと。


また、花の精は、飲んだり食べたりしなくても生きていけること。

でも、飲み食いができないわけではないし、カズハ自身は甘いものが好きなこと。



そういえば、その話を聞いた後にカズハにチョコをあげたことがある。

「ちょことゆーたか?口に入れたらなくなってしもうた!」

そう言いながら目を輝かせるカズハが面白くて
俺はしばらくの間笑い続けたんだよな。


その後で、睨まれたのは言うまでもないけど……。



そんな感じで、毎日は穏やかに過ぎていった。


そして、桜がちらほらと花を咲かせる頃には
父親と妹も、澄月町へ引っ越して来た。
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