春、恋。夢桜。

【三】

どれくらいの間、ぼぅっとしてたんだろう。


ぼぅっとしてた記憶も、あまりはっきりしない。


知らない間に寝てたのか……


意識を取り戻してそっと目を開けると

そこには真っ暗な世界が広がっていた。


いつの間にここまで暗くなったんだ?


昼間まではあんなに晴れてたのに、今は月だって見えない。


まだ、新月には早いはずだよな……――――


それによく考えれば、いくら夜だって言っても

部屋の中が何も見えないなんておかしい。


もう目を覚ましてからしばらく経ってるし

目が暗闇に慣れてきても良いはずだ。



わけがわからないまま、俺はその場に立ち上がった。


今まで気付いてなかったけど

自分が寝てたはずのベッドも、ここにはない。


不思議に思って辺りを見回してみたけど、当り前のように周りには何もない。


当てもなく首を動かす俺の姿は、かなり怪しいはずだ。


でも、そんなことも気にしていられないくらい


頭の中はパニックに陥っていた。


「お主、何をやっとるんじゃ?そんな阿呆みたいなことをしておると、せっかくの格好良い顔が台無しじゃぞ?」
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