春、恋。夢桜。
二、梨恋

【一】

初めて足を踏み入れた高校。


家から自転車で15分。

道路を挟んで、目の前にはコンビニ。

その逆側には、本屋と喫茶店。


なかなか便利な場所に作られた学校だと思った。



さすが私立、とでもいうようなレンガ作りの西洋風の門を通り抜けて

無駄に長いエスカレーターに乗る。


その先に、やっと教室のある棟があった。


新年度からの切りが良い時期の転校だったから

面倒なあいさつもなしに、そのまま教室へ行けるように許可をもらった。



俺は、白く明るい廊下に張り出されたクラス分け表を確認して、教室へ向かう。


でも、教室に入った瞬間に感じたのは好奇の視線の集まりだった。


俺が入る、「特別進学クラス」は各学年に2つしかないらしい。

3年間で毎回クラスは変わるけど、ほとんど全員が顔見知り状態。


そこへ入るのは、少し抵抗もある。


着古して、良い感じにしなった制服集団の中に
しっかりと形を残したままの俺の制服はひどく浮いた。
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