春、恋。夢桜。
 
カン、カン、と鈍い音の響く金属の階段を進んで、部室の前に立つ。


「戸崎潤、入りまーっす!」


所々が茶色く錆びた白いドアをノックしながらそう言うと
戸崎はゆっくりとドアを開けた。


中に入る戸崎に、戸惑いながらも続く。


「潤、そいつ誰?」


着替えの途中だったのか、黒いジャージのズボンだけを履いた男が言った。


手足が長くて、背も高い。

見るからにスポーツの得意そうな奴だった。


「あぁ。俺と同じクラスの響だよ。
この後ちょっとデートだから、ここで待たせてやって?」


「デート……ってお前、デタラメなこと言うなよ」

「2人で出掛けるんだから間違いじゃねぇだろ? 行き先は本屋だけど……」

「キョウって……。お前もしかして……櫻井響、か?」
  



< 77 / 237 >

この作品をシェア

pagetop