先生、キライ!
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 私はちょっとずつ、学校が楽しくなっていた。

 きっかけは本当にチョットしたことなんだ……って思うようになった。

 近藤先生と私は、ちょっと似ているかもしれないと思い始めてから、心が少しずつ軽くなっていくような気がしていた。
 
 大人になっても、大人になったからといって、大人だから、自分に戸惑うこともあるっていうのを近藤先生を見ていて、知るようになった。大人になった自分をうまく受け入れられない。でも、子どもじみた懐古主義でもない。

 前を見ている。ただ前を見て頑張ってるのが近藤先生ことヤスオちゃんだ。


「石野は進路どうすんだ?」

 別に俺には関係ないけどなっていいながら、ヤスオちゃんは私に話しかけてきた。

 二学期も終わり頃になると、誰も近藤先生とは言わなくなった。みんなヤスオちゃんと言っていた。近藤先生は、「先生」と呼ばれようが、「ヤスオちゃん」と呼ばれようが、俺は俺だっていうポーズを崩さなかったから、みんなは「ヤスオちゃん」と声をかけるようになった。でも、ヤスオちゃんを馬鹿になんかしていない。尊敬まではいかないけれど、それなりに、近藤先生の存在を認めていた。

「う~ん、どうしようかなあ……就職難しそうだし、短大か専門学校かな」

「将来、何で食ってくんだ?」

「何って?」

「社会人になるっていうことは、生活して食っていくことだろう?っていうことは金稼がないと、生きてけないじゃないか、だから、何をして金を稼ぐかっていうことさ」

「まだ決めてない。だって、来年考えればいいでしょう?」

「ああ、まあな……けど勉強はしておけよ」

「なんで?」

「社会に出て、いい仕事するためじゃないのか?どっか難しく考えてんのか?」

 なんだか、私がずっとイライラ思ってきて、ため込んだ憤りの風船を、ヤスオちゃんは簡単にパーンと一個ずつ割っていく。

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