俺のシンデレラになってくれ!

「はぁぁぁ……」



思わず溜息を吐いたあたしを見て楽しそうに笑うと、晴香は鞄から筆箱を取り出しはじめた。



何でこんなことになっちゃったんだろう――――


どう考えたって、あたしにはシンデレラも演劇も似合わないし、まっすぐに自分の気持ちをぶつけてくる篤と一緒にいることだって似合わない。


篤みたいな人間を“いいな”って思わないわけでもないけど……そんなこと真剣に考えてるわけじゃない。


シャボン玉みたいに、すぐに消えてなくなっちゃうような、軽い気持ち。


だってあたしは、自分の立場をちゃんとわかってる。


勝手に持ち込まれてきた世界観に惑わされたら、自分の日常に満足できなくなりそうで怖い――――



がらがらとドアを閉める音が聞こえて、先生が来たことに気付いた。


はっとして、急いで鞄を探る。


まだ何も書いてないルーズリーフと、よれよれになった筆箱を取り出して、あたしは前を向いた。

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