俺のシンデレラになってくれ!
どういう意味なのかわからなくて首を傾げてみたけど、それ以上何も言うつもりがなかったのか、篤はさらに綺麗な笑顔を浮かべた。
早く準備しろってことかな。
中途半端な片腕を処理してから、急いで立ち上がった。
立ち上がった瞬間に感じた軽い眩暈が、少し前までと全く違う自分の状況のせいなのか、単なる立ちくらみなのかはわからない。
「大丈夫?」
「うん、平気。お邪魔しました」
「いや、こっちこそありがと。行くか」
「うん」
何に対しての“大丈夫”だったんだろう?
そんなことを少しだけ考えてから、あたしは篤が開けてくれたドアに向かった。
先を歩く背中に続いて、真っ白な壁に囲まれた階段を下りる。
ここを降りたらまた、あたしの現実が始まるんだ。
シンデレラが、夜の12時にお城の階段を駆け下りた時みたいに。
ただ、物語の中のシンデレラと違って、あたしの前には道しるべになってくれる背中がある。
これに全てをゆだねるのは、不安すぎて無理だけど……。
今、ここから駅へ行く間くらいなら、頼っても平気なはずだ。