野辺の送り
彼女は、末期の癌患者だった。
子宮に悪性の腫瘍があって、もうどうしようもなかった。

 ご家族の方と話がしたいと、告げたとき、彼女はにっこり笑って「あとどのくらいでしょうか?」と尋ねた。

滑らかな口調の中に、彼女の覚悟を知った私は、正直に答えた。
 
その後、

「どうして、もっと早くに病院においでにならなかったのですか?」

 搾り出すような私の声は、むしろ私が彼女の身内のような感情をあらわにしたものだったから、彼女のほうが、私をなだめることになった。

「まあ、そんなに心配してくださって……

ありがとう。

もう少し早くに貴女のようなお医者さんと出会っていたなら、この世にもっと未練を感じたかしら」

といって、華のように笑った。
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