ブラウン管の中の彼女



“樺摘さんへ
朝練があるので学校に行きます。朝ごはんは冷蔵庫の中にあります”



「あ―…」


昨日の夕方からずっと寝ていたせいか寝すぎで頭が重い。


俺は小学生か…。


こんなに寝たのは久し振りだった。


欠伸をしながら冷蔵庫を開ける。


冷蔵庫の中には味噌汁と豆腐とホウレン草の胡麻和えが入っていた。


俺がガキの頃はこんなに立派な朝飯なんて作ってもらえなかった。


「いただきます」


テーブルにつくと早速箸をつける。


美味い。


物心ついた時から料理をし始めたあいつの飯は驚くほど美味い。


料理だけじゃない。


掃除、洗濯、はたまた家計簿まで…祐一郎のやってることはそこらへんの専業主婦と変わらない。


………それがあいつの両親の“望み”だったから。



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