誘惑Baby


「陽平、照れてるんだもん…。こっちまで照れちゃうよ」

「照れて、ない…」

語尾が弱まるから説得力はないだろう。

実際、照れていないわけがないのだから。


「ありがとう。陽平、ありがとう」

屈託のない笑顔は、俺の頬をより一層赤くさせるのには充分で。

何をしたらいいか、分からなくなって軽くパニック状態である。


「陽平…、大好き!」


その笑顔は、いけないでしょ…。


うまく、頭が回らなくなるよ。


ただ、好きだって気持ちだけがいっぱいに広がって。


それは心地よくて、幸せで…優しくて、柔らかくて、落ち着いて。


あー、これが愛なのかななんて、柄にもなく考えてみたりしてしまう。




今まで、いくつかの人と恋をした。


どれも、適当な恋なんかじゃなかったはずだ。


けど、こんなに愛とか幸せとか、噛みしめたことは…あっただろうか。


目の前で、俺を見つめて微笑む人を…心ごと抱きしめたいと思ったことがあっただろうか。


「優子…」


名前をつぶやけば、ほら心が暖かくなる。


ヤるとかヤらないとか、そんなもんじゃ…はかれないんだ。


そんなもん、二の次なんだ。


目の前にいる、この人を…彼女を、ただ抱き締めることが出来たら、それでいいんだ……。



強く、強く、抱き締める。

「…?陽平…?」


離したくない。



……離さない。



「愛してるよ」



優子…


愛してる。




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