恋する手のひら
家に帰って制服を着替えると、お母さんに声をかけられた。

「煮物多めに作っちゃったから、タケルくん家に持ってってくれない?」

タケルくん筑前煮好きだったわよね、と言いながらお母さんは器に詰めていく。

あの後も結局、話し掛けられなかったから、きっかけができたのは嬉しい。

だけど心の準備ができてなかったから、内心不安に思いながら器を受け取った。


タケルの家に着いて、まず深呼吸する。

緊張しながらインターホンを押すと、タケルのお母さんが顔を出した。

「あら実果ちゃん、最近うちに寄ってくれないから寂しかったのよ」

「あの、これ。
作り過ぎちゃったからどうぞって」

私が器を差し出すと、おばさんはにっこり。
笑顔がタケルそっくりなんだ。
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