恋する手のひら
「───ていうか、俺はお前とタケルの方がよっぽど気になってるんだけど」

秀平に言われて私はきょとんとしてしまう。

「だから。
付き合ってる間、お前らがどこまでいったのか、気になってるってこと」

やっと意味が分かり、私は首をぶんぶん横に振る。

「ない!ない!
私とタケルに、そんなことあるはずないじゃん!」

こんなに否定するのも変だけど、変な誤解はされたくない。

「ならいいけど…」

秀平がホッとしたように、小さくつぶやく。
それって、私とタケルのことで嫉妬してたってこと?

「───秀平も、本当に希美ちゃんと何もないの?」

秀平の言葉を信じてないわけじゃない。

「ないって」

「───事故の後、寄りを戻したときも?」

だけどこれだけはきちんと確認しておきたかった。
だって私はあのときの二人のキスを見てしまったから。

一度別れたようには見えない、自然なキス。
二人の間に何もないなんて信じられないくらいだった。
< 229 / 258 >

この作品をシェア

pagetop