恋する手のひら
「どうした?」

黙って立ち尽くす私に気付いて、タケルが笑いながら声を掛けた。

「日直は職員室に来てって、担任が…」

まさか、タケルと久美子のツーショットに見とれてたなんて言えず、ただ伝言するだけなのに、しどろもどろになってしまう。

元バレー部のエースで、すらっとした美人の久美子とタケルがお似合いなことに、今更気付いた。

「おう、今行く」

「じゃね」

久美子は手を振って去って行く。

邪魔しちゃったかな。

職員室に向かう途中、隣を歩くタケルに聞いた。

「久美子と付き合ってたりする?」

私の問いにタケルは目を丸くした。

「何じゃそら」

「すごくお似合いだったから」

嫌味とかじゃなく、本当にそう思った。

「んなわけあるか」

タケルは笑うけど、心なしか表情が固い。

久美子はこの間、もう一度タケルに告白するつもりだと言っていたけど。
付き合ってないってことは、告白していないのか、あるいは振られたのだろうか。

そこまで考えて、何となくホッとしてる自分に嫌気がさす。
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