恋する手のひら
もう今さら恋愛対象に見てもらえるわけない。
そう諦めていた矢先に───、あのキスだ。


私の家に着くと、秀平は足を止めた。

ねぇ、秀平。
さっきのキスはどういう意味だったの?

期待と不安に押し潰されそうになりながら彼が何か言うのを待っていると、秀平はゆっくり私を振り返った。

秀平と目が合った瞬間、まるで雷にでも打たれたみたいに身体中に電気が走る。
秀平のことが好き過ぎて、涙が溢れそうになる。

「明後日、暇?」

秀平がようやく口を開いた。

偶然か必然か、明後日は私の誕生日で、しかも日曜日。

「暇だけど…」

心臓が口から飛び出しそうになるのを堪えながら答えると、

「噴水広場に、10時な」

秀平はそれだけ言って立ち去ろうとする。

ちょっと待って。
こんなもやもやしたまま別れるなんて、絶対嫌だ。
私はとっさに秀平の腕を掴んだ。

「それって、デート…?」

私の言葉に秀平は振り返ると、

「いいんじゃない?
そう思って」

と言って、少しだけ口元を緩めた。
< 4 / 258 >

この作品をシェア

pagetop