春待つ花のように
 ゼクスはあまり自分のことは話したがらない。

 カインと親しくしている姿を何度か見ているが、他の仲間たちとはプライベートで接している姿を見なかった。
 
 任せたぞ、とノアルはカインの肩に手を置くと、部屋を出て行った。







「ここは?」

「ノアル様が住んでいた酒場の三階の部屋です。薬屋はもう駄目ですね。ロイの部下たちが網を張っていますから」

 ゼクスは小さく頷くと窓から外を眺めた。

「ここがノアル様の部屋…ここで10年間…」

「隊長とは以前、話してくれた女性のことですか?」

 なかなか話し出そうとしないゼクスにカインが先に持ちかけた。ゼクスはベッドの布団を掴むと、視線を下にした。

「エマっていうんだ。俺がレティアと関係をもっていてもアスラン派の人間だとは一言もまわりには言わなかった。だから…もう誰にも言わないだろうって勝手に信用して…あいつが軍と裏で計画していたなんて気づきもしなかった」

 ゼクスは苦しい顔つきで話をする。
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