初恋の実らせ方
「一服って…」


タバコ?
彩がびっくりしていると、啓吾はどう答えるべきか少し迷った後、


「内緒な」


人差し指を口に当てて言った。


「悪い奴だって幻滅した?」


そう言って視線を送ると彩が必死に首を横に振るので、啓吾は困ったように頭を掻く。


「俺、彩ちゃんが思ってるような優等生じゃないよ」


そう言えば、この間も言われたっけ。
『彩ちゃんは俺を買い被ってる』って。


「たまに酒もタバコもやるし。
―――それに…」


そこで啓吾は一旦言葉を区切ると、彩の目を見つめて続けた。


「弟の欲しいもの横取りだってできる…」


彩は、その濃い茶色の瞳に吸い込まれそうになる。


「え…?」


「―――さっき俺が彩ちゃんのこと『好きな子』って言ったの覚えてる?」


途端に鼓動が跳ね上がる。


「どうしてあんなこと言ったの…?」
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