初恋の実らせ方
「―――鈍いな、彩ちゃん。
はっきり言わないと分かんない?」


啓吾は笑いながら腕を緩めると、彩の頬にそっと口付けた。


柔らかい唇の感触が現実だと思えなくて、彩は頬に手を当てて確かめる。


「そんなはずない…。
だって啓吾くんは頭良くて、運動できて、格好良くて―――」


「黙って」


「―――私なんて、ガキっぽくて対象外…」


啓吾は黙れってば、と苦笑しながら彩の額を小突く。


彩が喋る気をなくしたのを確かめ、啓吾は彼女の腰に手を回して自分の上に抱き寄せた。


膝に抱っこされる形になり、彩は恥ずかしくて逃げ出したくなったけれど、啓吾は手を緩めない。


「け、啓吾くん…」


「勝手に決めんな…。
ちゃんと恋愛対象だから」


啓吾は優しく抱き締めながら、彩ちゃんはどうなの?と彩の顔を覗き込む。


途端に耳まで赤くなった彩を見て、啓吾は微笑む。


「やった、両想い」


啓吾はそうつぶやくと、彩の頬にもう一度口付けた。
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