初恋の実らせ方
「俺に聞くなよ」


黙り込んでしまった彩に溜め息をつく。
全く、彩はすぐ赤くなるので分かりやすい。


英知はこんな話聞きたくないし、相談に乗る気もさらさらないけれど。
そんな英知の気持ちに気付く気配のない彩を見ていると断れない気がして、よくよく人の良い自分に呆れる。


「キスもできない彩が悪いんじゃないの?」


「仕方ないじゃん。
したことないんだもん…」


彩は膨れて言うと、続けてさっき浮かんだ疑問を口にする。


「英知は、したことあるの?
―――キス」


英知はペットボトルを落としそうになるのを堪えながら、呆れたように彩を見た。
彩は論点がずれてることに気付いてないのだろうか。


「―――俺のことは関係ないだろ…」


「慌てるってことはやっぱりあるんだ!
ねぇ、誰と?
英知って彼女いたの?」
< 75 / 184 >

この作品をシェア

pagetop