初恋の実らせ方
啓吾が待ち合わせ場所を間違えたのなら、彩はただ連絡が来るのを待つしかない。
彩は広場のベンチに腰掛けて啓吾を待った。


それからさらに30分が過ぎ、途方に暮れかけた頃。


「―――彩?」


後ろから名前を呼ばれ振り返ると、そこにいたのは良く似た顔をした、だけど比べて小柄な英知だった。


英知を見るのは、この間キスした夜以来。
あの夜はもう顔も見たくないと思ったのに、実際こうして久しぶりに会うとなぜか嬉しく感じてしまうのはなぜだろう。


「何やってんの?」


彩は、そのまま英知に聞き返してやりたい。
こんなところでふらふらしていないで家にいてくれれば、さっき電話をかけたときに啓吾の向かった先を聞くことができて、今頃会えていたかもしれないのに。


彩は口を尖らせながら開く。


「啓吾と待ち合わせてるんだけど、連絡が取れなくて…。
―――って、英知その顔どうしたの?!」


彩は英知の異常に気付くなり、目を丸くして叫んだ。
< 95 / 184 >

この作品をシェア

pagetop