初恋の実らせ方
英知はハッとして頬を押さえ、その瞬間走った痛みに堪える。


啓吾に殴られたことを知れば、彩はきっと傷付く。
それに今回は明らかに英知に非があったわけだから、もし話せば、告げ口するようでフェアじゃない。


「あぁ…。
練習中にちょっと…」


英知は平気そうな顔で答えるけれど、きっと今も相当な痛みがあるに違いない。


打球が当たったの?
それとも誰かとぶつかったの?


だけどその痣は、そんな風にしてできたようには見えない。


「練習でそんな痣できるわけ―――」


「俺のことはいいって。
そんなことより、待ち合わせって本当に今日なの?」


英知は痣のことに触れられたくないようで、話を流されてしまった。


まだその痣が若干気になりつつ、彩はその問いに頷く。
待ち合わせは、今日で間違いはないはず。
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