幸福の時間へようこそ
「ハッ!」
息継ぎとも叫びともつかない声で目覚めると、外はすでに明るいようだった。
カーテンの隙間から伸びた一筋の光は、夢と現の間に引かれた線のようにくっきりと、そして曖昧に伸びている。
「ハァ……」
呼吸を整えながら、花梨(かりん)はベッドサイドのデジタル時計を見やった。
10分前……。
アラームをセットした時間より早く起きれたといっても、これは歓迎すべき起床ではない。
まだ、心臓がドキドキしているのがわかる。
全身は鉛を仕込まれたように重たい。
おまけに、寒さ対策にと着こんだフリース生地のパジャマは、汗でぐっしょりと湿っている。
でもわたしは、なにをあんなに恐れていたんだろう?
思いだそうとしても無理だった。
真白な和紙に垂らされた墨汁のように、ただただ、恐怖だけが沁みついている。
夢とはいえ簡単に忘れられそうにはない。
最悪な、1日のスタートだ。
それでも、時間は待ってはくれない。
ノロノロとベッドから這い出すと、コップ1杯の水を飲み、トイレへ行き、顔を洗った。
そうやって花梨は毎朝の習慣をこなし、重苦しい気分を抱えたまま会社へと向かった。
いつもと変わらない1週間が始まる……。
はずだった。
息継ぎとも叫びともつかない声で目覚めると、外はすでに明るいようだった。
カーテンの隙間から伸びた一筋の光は、夢と現の間に引かれた線のようにくっきりと、そして曖昧に伸びている。
「ハァ……」
呼吸を整えながら、花梨(かりん)はベッドサイドのデジタル時計を見やった。
10分前……。
アラームをセットした時間より早く起きれたといっても、これは歓迎すべき起床ではない。
まだ、心臓がドキドキしているのがわかる。
全身は鉛を仕込まれたように重たい。
おまけに、寒さ対策にと着こんだフリース生地のパジャマは、汗でぐっしょりと湿っている。
でもわたしは、なにをあんなに恐れていたんだろう?
思いだそうとしても無理だった。
真白な和紙に垂らされた墨汁のように、ただただ、恐怖だけが沁みついている。
夢とはいえ簡単に忘れられそうにはない。
最悪な、1日のスタートだ。
それでも、時間は待ってはくれない。
ノロノロとベッドから這い出すと、コップ1杯の水を飲み、トイレへ行き、顔を洗った。
そうやって花梨は毎朝の習慣をこなし、重苦しい気分を抱えたまま会社へと向かった。
いつもと変わらない1週間が始まる……。
はずだった。