揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「さぁ、食べましょう?」


まるで何事もなかったかのように、彼女はそう言うけれど。

とても、ケーキを堪能する気分になんかなれない。


「誰…なんですか?」


フォークを手にしている彼女に、私は震える声で尋ねた。

いろんな感情が入り混じり、気持ちがどんどんと高ぶってくるのが分かる。


「『誰』って?」


見るからに高級そうなチョコレートケーキを口に運びながら。

大翔君のお母さんは、どこか余裕な感じで私を見ている。


困惑しきっている私を見て、明らかに楽しんでいる気がする。


「本命の彼女って、誰なんですか……?」


水沢じゃなくて、私じゃなくて。

じゃあ、大翔君は誰を愛してるっていうの?


「それを隠す為に、大翔はあなたとつき合ったんじゃない」


エスプレッソの香りを楽しみながら。

彼のお母さんは、『馬鹿げた質問』だと言わんばかりにちらっと私に視線を送った。


「でもっ、いきなりこんな事言われても納得できないですっ」


「あなたが納得しようがしまいが、事実なんだから仕方ないじゃない。それより、早く気付かせてあげたんだから感謝してもらってもいいぐらいよ?」


ずっと、愛し合ってると思ってた。

私と同じぐらいの気持ちで、大翔君も私を想ってくれてるんだろうって。


それが、こんな形で彼の本心を聞かされるだなんて。
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