揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦

chapter27

2人でゆっくり話をする為に。

私と大翔君は、駅のそばの公園に場所を移した。


「実はここ、俺が諒斗を殴ったトコなんだよね」


そう言って悪戯っぽく笑うと、彼はグランドの方にある木製のベンチに腰を下ろした。

私の代わりに殴ってくれたのは聞いたけど、ここがその現場だというのは初耳だった。


「あの時は…ありがとね」


諒斗は、昨日私にこう言ってくれた。


『偽物の彼女の為に、わざわざ俺を殴りには…来ないよな?』


その言葉と、すぐ目の前にいる彼とを照らし合わせる。


いいの…かな?


優しい笑顔を向けてくれる彼に。

私は、自惚れてしまってもいいのかな……?


「俺が勝手にやった事だし。由佳の為って言いながらも、結局は俺の為だからさ」


「ううん。私は嬉しかったよ?」


それが例え、形だけのものだったとしても。


そう…続けたかったけれど、私はぐっと言葉を飲み込んだ。


「なら、良かった」


ホッとしたように声を漏らすと、彼は私の方に体を向き直して。

そのまま、じっと私の目を見てきた。


つられて、私も彼の方に体を向ける。


「話…なんだけどさ」


至って真面目な顔で、少し言いにくそうに彼が言葉を発する。


「うん……」


そう頷き返すしかなかった。


知りたかった真実がすぐそこにあるというのに。

今になって、知る事の怖さを感じていた。


自分の耳に届いてしまいそうなぐらいに鼓動が大きくなり。

体が小刻みに震えてしまっている。


自然と、視線を逸らしてしまっていた。
< 224 / 337 >

この作品をシェア

pagetop