揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「何か、すっげぇ久しぶりな感じ」


そう言ってはにかむ彼を、凄く愛おしく感じてしまう。


私の事を好きじゃないとしても。

お母さんと愛し合ってるんだとしても。


私はやっぱり、神崎大翔って人が大好きなんだ。


「……会いたかった」


「俺も会いたかった」


そして、ゆっくりと踏み出してくる彼を。

私は…じっと見ていた。


この言葉が、もし偽りなんだとしても。

私は…喜んで騙されたいと思う。


「あの2人と…待ってたの?」


「えっ?違うよ。2人とは、たまたま会ったの」


「そっか。なら良かった」


ホッとしたような声が聞こえたかと思ったら。

次の瞬間には、私は彼の腕によって包まれていた。


「俺と別れて、どっちかとつき合うって言うのかと思ったよ」


左の耳元で、安堵の声を漏らす彼。


もう、嘘でもいい。

こうして抱きしめてくれるのなら……。


「そんなわけないじゃん。私は、別れないから。これから何があったって、絶対に別れないよ」


ぎゅっと、彼の背中に回した手に力を込める。

通り過ぎる人達の視線すら気にならないぐらい、私は彼で一杯だった。


「話…あるんだ」


躊躇いがちな彼のその言葉に、心臓がドクンと跳ねるのを感じた。

いよいよ彼の口から語られるのかと思うと、全身に緊張が走る。


「とりあえず、どっかでゆっくり話しよっか?」


彼は私からゆっくりと体を離し。

綺麗な漆黒の瞳で真っ直ぐに私を捕えながら、そう尋ねてきた。


「……うん」


覚悟を決めて。

彼の目を真っ直ぐに見返しながら、私は頷いた。
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