揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
そいつを見た時の由佳の顔は。

驚いてはいたものの、何だか嬉しそうで。


どこか、ホッとしているようにも見えた。


あの愛らしい笑顔が、俺じゃなくてアイツに向けられている。


そう思うだけで、とてつもなく胸が締め付けられる。

その後に2人がどんな話をしているのかが、他の客のざわついた声でうまく聞き取れない。


すっげぇ気になるのに、これ以上近付く事ができなくて。


今日のデートを断ったのは俺の方だし。
 
しかも、まどかさんがもうすぐ戻って来る。


楽しそうにしている2人の姿を背後に残したまま、俺は逃げるように店を出た。


あんな奴に、そんな顔見せんなよ……。


今の俺には、言う資格は無いのかもしれない。


だけど、昨日あんなに愛し合った由佳が。

今は、とてつもなく遠く感じるんだ。


「中、入らなかったの?」


ふいに声をかけられ、俺は内心ビクッとしていた。

いつの間にか、まどかさんが戻って来ていたらしい。


「あ、あぁ。混んでて、席空いてなかったよ。やっぱスパイク見たいから、その後にあっちのカフェに行かない?」


注意を逸らすように、慌てて奥にあるスポーツ用品店の方を指差した。


「空いてないなら、しょうがないか。じゃあ、大翔のスパイク見に行こ」


別段気にすることなく、そう言ってくれたので。

内心、かなりほっとしていた。


由佳の姿を見たら…何か言い出しかねないし。


後ろ髪を引かれる想いを振り切り。

俺は、まどかさんと共にモールの奥へと向かった。
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