揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「2年なら、バスケ部の矢島と高崎って知ってる?」


意外な名前が飛び出し、私のテンションも自然と上がっていた。

まさか、あの2人の知り合いだなんて。


「友達です、2人ともっ。諒斗は中学も一緒で」


「へぇ、そうなの?なんか嬉しいな、こうやって話せるの」


そう言って、先輩は顔をほころばせていた。

バスケ部だったのなら、この背も頷けるかも。


「名前、訊いてもいい?」


笑顔の先輩に尋ねられ。

何の疑いも無しに、名前を教えようとした時だった。


「由佳?」


通路の方から声がして、見ると何冊か本を手にした大翔君が立っていた。

明らかに不機嫌そうな顔をして、こっちを見ている。


ずっと戻らないから、怒ってる……?


「あのっ、これっ、ホントありがとうございました!」


とりあえず先輩にお礼を言い。

何か言いたげな先輩に背を向けて、大翔君の元へと急いだ。


仏頂面になっている彼に、空いている右手を【ゴメン】と顔の前に持っていく。


「知り合い?あの人」


並んで歩きながら、大翔君がそう尋ねてきた。

その無表情が、私の心臓をバクバクと動かしていく。


「一番上にあって取れなかった本を取ってくれたんだ。それがたまたま、うちの高校の先輩で……」


そう説明している間、彼の冷めた表情が私の胸に何度も突き刺さってきて。


「なんか…怒ってる……?」


そう、尋ねずにはいられなかった。
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